個別株を選ぶ自信がありません。それでも投資は始められますか?
そのための定番が、市場全体をまとめて持つインデックス投資です。銘柄を当てる代わりに、指数と同じ値動きを買います。
インデックス投資とは、日経平均株価やS&P500といった株価指数(インデックス)に連動する運用成果を目指す投資手法のことです。個別の企業を選ぶ代わりに、指数を構成する銘柄の集合——つまり市場全体を、投資信託やETFを通じてまとめて保有します。金融庁のワーキング・グループ報告書(2017年3月)は、インデックス投信を「マーケット全体の値動きに忠実に連動することを基本とする商品」と説明し、値動きのわかりやすさやコストの低さから「投資初心者の利用に適している」と位置づけています。
なぜこの手法が入り口になるのか。「これから伸びる会社」を見抜くには、決算を読み、業界を追い、売り時を判断する目利きが求められます。一方、「米国の主要企業500社を丸ごと」であれば、選ぶ対象は個別の会社ではなく、どの市場に居続けるかという一段大きな問いに変わります。判断の負荷が軽いぶん、長く続けやすい。これが、インデックス投資が初心者の出発点とされてきた理由です。
- インデックス投資(パッシブ運用)の仕組みと、アクティブ運用との違い
- 日経平均・TOPIX・S&P500・オール・カントリーなど代表的な指数の中身
- 投資信託とETF、どちらの器で持つかの比較
- 「人気だから」で選ばないための3つの確認軸
- 新NISAつみたて投資枠の対象商品に課されている基準
指数に連動させる、という運用の仕組み
運用の世界では、日経平均やTOPIXのようなベンチマーク(指標となる指数)に連動する運用成果を目指す手法を「パッシブ運用」と呼びます。インデックス運用はその別名です。ファンドは指数の構成に沿って銘柄を保有するため、指数が上がればファンドも上がり、指数が下がれば同じように下がります。インデックス投資は「損をしにくい投資」ではなく、「市場と同じだけ動く投資」です。
対になるのが、指数を上回る成果を目指す「アクティブ運用」です。銘柄の調査や入れ替えに手間がかかるぶん、保有コストである信託報酬は高くなる傾向があり、一般的な目安としてインデックスファンドが概ね年0.1〜0.3%程度なのに対し、アクティブファンドは年1.0〜2.0%程度とされます。信託報酬は保有している間ずっと差し引かれ続けるため、長期投資ではこの差が複利で効いてきます。
銘柄を当てる目は、要らない。市場から降りない仕組みを、先に選んでおく。
代表的な指数を知る
「指数に連動する」と言っても、どの指数を選ぶかで持つ市場が変わります。新NISAの対象にもなっている代表的な指数を並べると、次のようになります。
| 指数 | 対象 | 算出方法・特徴 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 東証プライム市場から日本経済新聞社が選ぶ225銘柄 | 株価平均型。個別銘柄の株価水準の影響を受けやすい |
| TOPIX(東証株価指数) | 日本株・約1,700銘柄(2026年7月時点) | 浮動株調整後の時価総額加重型。時価総額の大きい企業の影響を受けやすい |
| S&P500 | 米国の主要企業500社 | 時価総額加重型。米国株式市場の投資可能時価総額の約80%をカバー |
| MSCI ACWI(オール・カントリー) | 先進国23・新興国24の計47か国・地域、約2,500社 | 時価総額加重型。世界の投資可能株式時価総額の約85%をカバー |
日経平均とTOPIXは、同じ日本株の指数でも性格が異なります。日経平均は選ばれた225銘柄の株価を平均する「株価平均型」、TOPIXは1968年1月4日の時価総額を100として算出する「時価総額加重型」です。なおTOPIXは市場区分再編に伴う見直しの途上にあり、2025年1月末に完了した第1段階で構成銘柄は約2,170から約1,700に減りました。2026年10月からは第2段階が始まり、2028年7月には約1,200銘柄まで絞り込まれる見込みです。構成銘柄数は今後も変わっていく数字として捉えておくのが安全です。
このほか、つみたて投資枠の対象指数にはMSCI WorldやFTSE Global All Cap、米国株全体を対象とするCRSP U.S. Total Market Indexなどが告示で指定されています。対象指数の顔ぶれは、2018年のつみたてNISA創設時から基本的に変わらずに引き継がれてきました。
読売新聞グループ本社が2025年3月に公表を始めた日本株の新指数で、流動性・時価総額上位の333銘柄を約0.3%ずつ均等に組み入れる「等ウェート方式」を採用しています。2026年4月1日の告示改正で新NISAの対象指数に加わりましたが、歴史が浅く実績データはまだ限られます。日経平均やS&P500と同列に実績を比較できる段階ではない点は、覚えておきたいところです。
投資信託とETF、どちらの器で持つか
同じ指数に連動する商品でも、「投資信託」と「ETF(上場投資信託)」という2つの器があります。最大の違いは、証券取引所に上場しているかどうかです。
| 比較軸 | 投資信託 | ETF |
|---|---|---|
| 上場 | 非上場 | 証券取引所に上場 |
| 売買価格 | 1日1回算出される基準価額 | 取引時間中にリアルタイムで変動(指値・成行注文が可能) |
| 最低購入額 | 金融機関により100円〜1,000円程度から | 取引価格×売買単位で、数千円〜数万円程度になりやすい |
| 保有コスト | 信託報酬 | 経費率と呼ばれ、販売会社への支払いがないぶん一般に低い傾向 |
リアルタイムの価格で機動的に売買したいならETF、少額から淡々と買い続けたいなら投資信託、というのが器の性格です。後述するつみたて投資枠の対象で見ると、ETFは9本にとどまり、対象商品の大半は投資信託です。少額からの積み立てを想定する初心者にとって、現実の選択肢は投資信託が中心になります。
「人気だから」を、確認に変える3つの軸
同じ指数に連動するファンドは複数あります。ここで「なんとなく人気の商品」に流れず、自分で確かめられるようになることが、この記事のいちばんの目的です。確認すべきは、信託報酬・純資産総額・トラッキングエラーの3つです。
- 信託報酬 — 保有中ずっとかかるコスト。同じ指数に連動するファンド同士なら、運用成果の差は小さくなるため、信託報酬の低さが比較の重要な軸になります。インデックスファンドで概ね年0.1〜0.3%程度が一般的な目安です。
- 純資産総額 — ファンドの規模。資金が継続的に流入し、増加傾向にあることが望ましい状態です。
- トラッキングエラー — 指数とファンドの値動きの乖離度。値が小さいほど、ベンチマークに忠実に連動できている運用と判断されます。
いずれも、運用会社が定期的に開示する交付運用報告書などで確認できます。購入画面のランキング順位ではなく、この3つの数字を見てから決める。手間は数十分ですが、その数十分が長い運用の土台になります。
純資産総額の減少が続くと、運用会社の判断で運用が途中で打ち切られる「繰上償還」のリスクが高まります。長期で持つ前提のインデックス投資では、買う前だけでなく保有中も、資金の流出入をときどき確認しておくと安心です。
新NISAつみたて投資枠との関係
インデックス投資を非課税で行う受け皿が、新NISAのつみたて投資枠です。この枠の対象商品は「なんでも買える」わけではなく、金融庁が告示した要件を満たす公募株式投資信託とETFに限られます。運用会社が「対象商品届出書」を金融庁に提出し、要件への適合が確認されたものだけが公表される届出制で、2026年7月3日時点の対象は公募投信351本(株式型196本・資産複合型155本)とETF9本の合計360本です。
対象商品には、次の3つが共通の要件として課されています。
- 信託契約期間が無期限、または20年以上であること
- 分配頻度が毎月でないこと
- ヘッジ目的等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと
指数に連動する「指定インデックス投資信託」には、さらに販売手数料ゼロ(ノーロード)と、信託報酬の法令上限(国内資産対象で税抜0.5%以下、海外資産対象で税抜0.75%以下)が定められています。ただしこれはあくまで上限で、実際の商品はもっと低い水準に集まっており、2026年7月3日時点の実績平均は国内型0.26%、内外・海外型0.34%です。上限値と実績値を混同しないことが、商品を見るときの前提になります。なお、指数に連動しないアクティブ投信には純資産50億円以上・設定後5年以上といった追加要件が課されますが、指定インデックス投信にはこの要件はありません。制度側が、長期の積み立てに向かない商品をあらかじめふるいにかけている構図です。
制度は静かに更新され続けています。2026年4月1日の告示改正では、対象指数の追加(読売333を含む2指数)、一部指数の組合せ要件の撤廃、指数非連動投信の投資対象拡大(株式又は公社債へ)、定期売却サービスの手数料の取扱い変更、という4点の見直しが行われました。対象商品の一覧は月に数回のペースで更新されるため、実際に商品を選ぶ直前に金融庁の特設ページで最新の一覧を確認するのが確実です。
つみたて投資枠の年間投資枠は120万円で、成長投資枠と合わせた新NISA全体の枠組み(生涯1,800万円の非課税保有限度額など)は、新NISAの仕組みを整理した記事と併せて読むと全体像がつながります。
インデックス投資は、相場を当てにいく技術ではなく、市場に居続けるための構えです。指数を決め、器を決め、3つの数字を確かめる。この順番さえ守れば、最初の一本を選ぶ作業は「ランキングを眺めること」ではなく「自分で確かめること」に変わります。急ぐ理由はありません。確認を終えてから始めても、積み立ての設計はきっと静かに機能し続けます。
参考資料
- 金融庁「つみたて投資枠対象商品」特設ページ(対象商品届出一覧)
- 金融庁「つみたて投資枠対象商品の概要について」(2026年7月3日時点)
- 金融庁 説明資料(令和7年4月22日、対象指数・信託報酬要件の一覧)
- 金融庁「つみたてNISAについて」(平成29年7月、対象商品の詳細要件)
- 金融庁「非課税口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に関する基準の一部改正について」(2026年4月1日施行)
- 日本取引所グループ「TOPIX(東証株価指数)」
- 日本取引所グループ「TOPIXの見直しの概要」
- 日本取引所グループ「他の投資信託との違い(ETF)」
- MSCI「MSCI オール・カントリー・ワールド指数(ACWI)」
- S&P Dow Jones Indices「S&P 500®」
- 松井証券マネーサテライト「読売333」解説
※制度内容・数値は2026-07-14時点で確認した一次資料に基づきます。最新の対象商品・要件は金融庁の特設ページをご確認ください。